皆さん、こんにちは!英語学習、順調に進んでいますか?
こんな経験はありませんか?
『ネイティブの英語が、なんだかモゴモゴと詰まったように聞こえる…』
『”street” や “splash” のような単語が、うまく発音できない…』
『シャドーイングで、どうしてもネイティブのスピードについていけない箇所がある…』
もしそう感じているなら、あなたは「子音クラスター」という、英語特有の発音の壁に直面しているのかもしれません!今回は、日本人学習者が特に苦労する英語発音パターンの第3回目として、「子音クラスター」に焦点を当て、その特徴と克服法を詳しく解説していきます。
1. 子音クラスターとは?
子音クラスターとは、母音を挟まずに子音が2つ以上連続する音の連なりのことです。英語にはこの子音クラスターが非常に多く存在します。
例えば、記事冒頭の例文を見てみましょう。
“The strength of the spring surprised me.”
この文の中だけでも、str
(strength), ngth
(strength), spr
(spring), ng
(spring), rpr
(surprised), s
+d
(surprised) のように、子音が連続している箇所がたくさんありますね。
2. なぜ日本人学習者にとって難しいのか?
子音クラスターが日本人にとって難しい理由は、日本語の音の構造と大きく異なる点にあります。
- 日本語は基本的に「子音+母音」の組み合わせ: 日本語の音は、「か(ka)」「さ(sa)」「た(ta)」のように、基本的に子音と母音がセットになっています(「ん」を除く)。そのため、子音だけが連続する音に慣れていません。
- カタカナ表記の影響: 外来語をカタカナで表記する際、子音クラスターの間に母音(主に「ウ」)が挿入されることがよくあります。例えば、”street” は「ストリート」、”strike” は「ストライク」となります。このカタカナ発音に慣れていると、英語本来の音とのギャップに戸惑います。
- 音の「長さ」の感覚の違い: 日本語は「モーラ」という単位でリズムをとりますが、これは大まかに「かな一文字」の長さに対応します。一方、英語は「音節」が基本で、子音クラスターは1音節の中に圧縮されて含まれることが多いです。
3. 日常会話でよく使われる子音クラスターの例
実際にどのような子音クラスターがあるか、いくつか例を見てみましょう。
3.1. 語頭(単語の始まり)の子音クラスター
- 2連続:
bl
(blue, black),fl
(fly, floor),gl
(glass, global),pl
(play, please),sl
(sleep, slow),br
(bread, brown),dr
(drink, drive),fr
(free, friend),gr
(green, group),pr
(price, practice),tr
(tree, train),sk
(sky, ski),sp
(speak, sport),st
(stop, study),sw
(swim, sweet),th
(/θ/ – three, through) - 3連続:
scr
(screen, scratch),spl
(split, splash),spr
(spring, spread),str
(street, strong, strength),thr
(/θr/ – three, through)
3.2. 語末(単語の終わり)の子音クラスター
ft
(left, gift),ld
(cold, hold),lp
(help, scalp),lt
(salt, adult),mp
(jump, lamp),nd
(and, hand),nk
(think, bank),nt
(want, student),pt
(slept, kept),sk
(ask, desk),sp
(crisp, wasp),st
(last, test)- 複数:
sts
(tests, guests),ths
(/θs/ – months, cloths),lpts
(scalpts),ngd
(hanged),nths
(months),cts
(facts, reacts),xts
(texts)
これらはほんの一例ですが、いかに英語に子音クラスターが多いかが分かりますね。
4. 日本人学習者が躓きやすいポイント
子音クラスターに慣れていないと、次のような点で躓きやすくなります。
4.1. 「余計な母音」を入れてしまう現象
最も典型的なのが、無意識のうちに子音の間に「ウ」や「オ」のような短い母音を入れてしまうことです。
例: “strength” /strɛŋθ/ → 「ス・ト・レ・ン・グ・ス」のように発音してしまう。
“glass” /glæs/ → 「グラス」のように発音してしまう。
4.2. 子音の一部を聞き逃す・発音しきれない現象
連続する子音のうち、どれか一つ(特に真ん中や最後の音)が弱くなったり、脱落したりして、聞き取れなかったり、自分で発音できなかったりします。
例: “texts” /tɛksts/ → “tets” や “teks” のように聞こえたり、発音してしまったりする。
“ask” /æsk/ → “ass” /æs/ のように聞こえる。
4.3. 単語の区切りが分からなくなる現象
文中で子音クラスターが現れると、前の単語の終わりと次の単語の始まりがくっついて聞こえ、どこで単語が区切れているのか分かりにくくなります。
例: “next stop” → /nekstɒp/ (ネクス・トップのように聞こえる)
“I scream” → /aɪskriːm/ (“ice cream” /aɪskriːm/ と同じように聞こえる)
5. 【体験談】シャドーイングで気づいた「音の数」とオーストラリアでの衝撃
ここで、この記事の作成をお願いした私自身の経験をお話しさせてください。
英語学習の一環でシャドーイング(聞いた英語を即座に真似て発音する練習)をしていた時のことです。「strength」という単語が出てきました。これを日本語の感覚で捉えると「ス・ト・レ・ン・グ・ス」と6つの音(モーラ)があるように感じますよね。私も最初はそう思い、6つの音を発音するつもりでシャドーイングしていました。
しかし、何度やってもネイティブのスピード感と合わないのです。そこで発音記号を確認すると /strɛŋθ/ となっていました。衝撃でした。日本語では6つの音に感じるものが、英語ではたった1つの音節(syllable)、一息で発音されるべき音の塊だったのです! s
, t
, r
という3つの子音が母音なしで連続し、さらに語末にも ŋ
と θ
という子音が連続する。この「子音クラスター」の存在と、日本語の音の数え方との根本的な違いに気づいた瞬間でした。
この経験は、その後の私の英語学習に大きな影響を与えました。以前、東南アジアで働いていた時期があり、日常会話にはかなり自信がついていました。
「もう英語は大丈夫だろう」
と思っていた矢先、休暇で訪れた世界遺産の場所で、オーストラリア人と話す機会があったのです。しかし、彼らの話す英語が、驚くほど聞き取れなかったのです。流暢で、音が繋がり、そしてまさにこの子音クラスターが多用されていて、私の耳は全く追いつけませんでした。自信があっただけに、そのショックは大きく、同時に「もっと本質的な発音やリスニングの力を身につけなければ!」と、英語学習への情熱に再び火が付きました。そして、あの時シャドーイングで苦戦した「strength」のような子音クラスターの理解と練習が不可欠だと痛感したのです。
6. 子音クラスターを克服するためのトレーニング方法
子音クラスターは、意識して練習すれば必ず克服できます。効果的なトレーニング方法をいくつかご紹介します。
6.1. 意識的な発音練習(分解と結合)
まずは、子音クラスターをゆっくり分解して一つ一つの音を確認し、徐々にスピードを上げて繋げていく練習です。
例: “street” /striːt/
s
の音を出すt
の音を出すr
の音を出すs
とt
を繋げて /st/t
とr
を繋げて /tr/s
,t
,r
を繋げて /str/ (間に母音を入れないように意識!)- 最後に母音と結合して /striːt/
6.2. ミニマルペア練習
子音クラスターの有無や、構成する子音の違いで意味が変わる単語ペア(ミニマルペア)を使って、聞き分けと発音の練習をします。
例:
pay
/peɪ/ vsplay
/pleɪ/ vspray
/preɪ/sip
/sɪp/ vsskip
/skɪp/ vsslip
/slɪp/top
/tɒp/ vsstop
/stɒp/
6.3. シャドーイング(子音クラスターを意識して)
私の体験談にもあったように、シャドーイングは非常に効果的です。ただし、ただ真似るだけでなく、「ここは子音クラスターだ」「母音を入れずに発音しよう」と意識しながら行うことが重要です。最初はゆっくりした音声から始めましょう。
6.4. 聞き取り練習(ディクテーションなど)
子音クラスターが含まれる単語や文を注意深く聞き、書き取る練習(ディクテーション)も有効です。聞き取れなかった箇所が、子音クラスターであることがよくあります。
7. まとめ
子音クラスターは、日本語の音韻体系にはないため、日本人学習者にとっては確かに難しい発音パターンの一つです。しかし、その存在を認識し、正しい練習を積めば、必ず聞き取れるようになり、そして発音できるようになります。
重要なのは、「カタカナ発音」の癖から抜け出し、子音だけで構成される音の塊を、母音を入れずに発音する感覚を掴むことです。私の経験のように、最初は苦労するかもしれませんが、子音クラスターを克服することで、リスニング力もスピーキング力も格段に向上し、より自然な英語に近づくことができます。
焦らず、一つ一つの子音クラスターにじっくり向き合っていきましょう!
▶その他の「日本人が苦手な英語発音パターン」シリーズの記事もぜひご覧ください:
- 日本人が苦手な英語発音パターン①: 弱形と強形
- 日本人が苦手な英語発音パターン②: 曖昧母音シュワー (Schwa)
- 日本人が苦手な英語発音パターン③: 子音クラスター
- 日本人が苦手な英語発音パターン④: 閉鎖音の解放/非解放
- 日本人が苦手な英語発音パターン⑤: 音節主音的子音
- 日本人が苦手な英語発音パターン⑥: 気息音化(アスピレーション)
- 日本人が苦手な英語発音パターン⑦: 異音変化(フラップTなど)
- 日本人が苦手な英語発音パターン⑧: 同化現象
- 日本人が苦手な英語発音パターン⑨: イントネーションパターン
- 日本人が苦手な英語発音パターン⑩: リエゾン (Linking R, Intrusive R)
- 日本人が苦手な英語発音パターン⑪: リダクション (gonna, wannaなど)
- 日本人が苦手な英語発音パターン⑫: 声門閉鎖音 (Glottal Stop)
- 日本人が苦手な英語発音パターン:総まとめ
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