日本人が苦手な英語発音パターン⑥: 気息音化(アスピレーション)(Aspiration) | 【海外赴任】英会話の上達・生産性UPに徹底的にこだわってみた

日本人が苦手な英語発音パターン⑥: 気息音化(アスピレーション)(Aspiration)

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皆さん、こんにちは!英語の発音、細かな違いに気づき始めていますか?

こんな経験はありませんか?
『”pen” と “ben”、”tie” と “dye” の違いが、ネイティブの発音だとすごくはっきり聞こえるのに、自分が言うと曖昧になってしまう…』
『ネイティブが “park” や “take”, “car” と言う時、最初の P, T, K の音に「フッ」という強い息の音が混じっているように聞こえる…』
『日本語の「ペン」「タイム」「カー」と言う時とは、息の使い方が違う気がする…』

もし、英語の /p/, /t/, /k/ の音に、日本語とは違う「息っぽさ」を感じているなら、それは「気息音化(きそくおんか)」、または「アスピレーション (Aspiration)」と呼ばれる英語の発音の特徴に気づいた証拠です。今回は、この無声閉鎖音 /p/, /t/, /k/ に伴う「息の強さ」について、詳しく解説していきます!

1. 気息音化(アスピレーション)とは? – 息の量が違う?

気息音化(アスピレーション)とは、無声閉鎖音 /p/, /t/, /k/ を発音する際に、音の破裂と同時に「フッ」という強い息の音が伴う現象のことです。発音記号では、息の音を伴うことを示す小さな h を右肩につけて、[pʰ], [tʰ], [kʰ] のように表すことがあります。

英語では、特定の条件下でこのアスピレーションがはっきりと起こります。一方、日本語の「パ」「タ」「カ」行の音にも息の成分は含まれていますが、英語の [pʰ], [tʰ], [kʰ] ほど強くはありません。この「息の量」の違いが、ネイティブには明確な音の違いとして認識されるのです。

2. なぜ日本人学習者にとって意識しにくいのか?

日本人学習者がアスピレーションを意識しにくい、あるいは習得が難しい理由はいくつかあります。

  1. 日本語との息の量の違いが微妙: 日本語の「パ」「タ」「カ」にも弱い気息があるため、「全く違う音」というよりは「程度の差」であり、意識しないとその違いに気づきにくいです。
  2. 学校教育での強調不足: 従来の英語教育では、/p/と/b/の違いなどは教わっても、/p/自体のアスピレーションの有無や強弱について詳しく触れられることは少なかったかもしれません。
  3. 息の量の違いが意味の区別に関わることへの無自覚: 英語では、アスピレーションの有無が、聞き手にとって /p/ なのか /b/ なのか、/t/ なのか /d/ なのかを区別する重要な手がかりの一つになりますが、その重要性を認識していない場合があります。

3. どんな時にアスピレーションは起こる?(そして起こらない?)

アスピレーションは、/p/, /t/, /k/ が現れる場所によって、その強さが変わります。常に強く息を出すわけではありません。

3.1. アスピレーションが「強く」起こる環境

  • 単語の始まり (語頭):
    • pen [en], park [ɑːrk], please [liːz]
    • tea [iː], take [eɪk], time [aɪm]
    • key [iː], car [ɑːr], come [ʌm]
  • ストレス(アクセント)のある音節の始まり: 単語の途中でも、アクセントのある音節の先頭に来る /p/, /t/, /k/ は強く気息を伴います。
    • appear /əˈɪər/
    • return /rɪˈɜːrn/
    • account /əˈaʊnt/

3.2. アスピレーションが「起こらない/弱い」環境

  • /s/ の直後:sp, st, sk の組み合わせでは、/p/, /t/, /k/ はアスピレーションを伴いません。この時の音は、日本語の「パ」「タ」「カ」の音に非常に近くなります。
    • spy /spaɪ/ (× /saɪ/)
    • stay /steɪ/ (× /seɪ/)
    • sky /skaɪ/ (× /saɪ/)
  • 単語の終わり (語末): 語末の /p/, /t/, /k/ は、前回解説したように「非解放」になることが多いですが、もし解放される場合でも、アスピレーションはほとんど伴わないか、非常に弱くなります。
    • stop /stɒp/
    • cat /kæt/
    • book /bʊk/
  • ストレス(アクセント)のない音節: アクセントのない音節にある /p/, /t/, /k/ は、アスピレーションが弱まる傾向があります。
    • happy /ˈhæpɪ/ (2番目の /p/ は弱い)
    • water /ˈwɔːtər/ (米語ではフラップTになることが多いが、/t/で発音される場合でもアスピレーションは弱い)
    • worker /ˈwɜːrkər/

4. 日本人学習者が躓きやすいポイント

アスピレーションの有無や強弱をコントロールできないと、以下のような問題が生じることがあります。

4.1. 息の量が足りず、有声音 (/b/, /d/, /g/) に聞こえてしまう
アスピレーションが必要な場面(語頭など)で息の量が足りないと、ネイティブには /p/ が /b/ に、/t/ が /d/ に、/k/ が /g/ に聞こえてしまうことがあります。これは、有声音 /b/, /d/, /g/ にはアスピレーションがないため、息の弱い /p/, /t/, /k/ と区別がつきにくくなるからです。
例:「I bought a pen.」の /p/ が弱すぎると、「ben」に聞こえてしまう可能性がある。

4.2. アスピレーションを意識しすぎて不自然になる
逆に、アスピレーションを意識しすぎて、本来不要な場面(/s/の後など)でも強い息を出してしまうと、不自然な発音に聞こえます。
例:「stay」を「sthay [seɪ]」のように発音してしまう。

5. アスピレーションを体感・練習する方法

アスピレーションは、少し意識を変えるだけで体感し、練習することができます。

5.1. ティッシュペーパーや手のひらを使った練習
これが最も分かりやすい方法です。

  1. 口の数センチ前にティッシュペーパーを一枚垂らすか、手のひらをかざします。
  2. まず、pen, tea, key のように、語頭で /p/, /t/, /k/ を発音してみます。ティッシュが大きく揺れたり、手のひらに強く息が当たったりすれば、アスピレーションが出ています ([pʰ], [tʰ], [kʰ])。
  3. 次に、ben, dye, go のように、対応する有声音 /b/, /d/, /g/ を発音します。ほとんど息が出ず、ティッシュは揺れないはずです。
  4. この違いを体感しながら、/p/-/b/, /t/-/d/, /k/-/g/ を交互に発音してみましょう。

5.2. ミニマルペアでの比較練習 (/p/ vs /b/, /t/ vs /d/, /k/ vs /g/)
アスピレーションの有無で意味が変わる単語ペア(ミニマルペア)を使って、聞き分けと発音練習をします。

  • pin [ɪn] vs bin [bɪn]
  • tie [aɪ] vs die [daɪ]
  • coat [oʊt] vs goat [ɡoʊt]

5.3. /s/ の後との比較練習
アスピレーションが「ある」場合と「ない」場合を同じ音で比較します。ティッシュや手のひらを使って確認すると効果的です。

5.4. ネイティブ音声の模倣(シャドーイング)
ネイティブスピーカーの発音を聞き、/p/, /t/, /k/ の息遣いを注意深く観察し、真似て発音する練習(シャドーイング)も有効です。

6. まとめ

気息音化(アスピレーション)は、英語の無声閉鎖音 /p/, /t/, /k/ を特徴づける重要な要素であり、特に単語の頭やアクセントのある音節の頭では、日本語よりもはるかに強い息を伴います。一方で、/s/ の後などではこの息は伴いません。

この息の量のコントロールは、英語をより明瞭にし、/b/, /d/, /g/ との誤解を防ぐために不可欠です。最初は意識するのが難しいかもしれませんが、「ティッシュを揺らす」ような感覚で練習すれば、必ず身につけることができます。

正しい場面で適切なアスピレーションを使えるようになると、あなたの英語はさらにクリアでネイティブらしい響きを持つようになるでしょう!


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